仮面夫婦
□十 再教育
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「へェ…お前、テンテンの知り合いだったのか」
「ああ、まあな」
いつもより混み合っている通りを、ネジ・リー・テマリが並んで歩く。
それでも大通りよりは人口密度はかなり低い。
「おい」
「? 何だ」
ズイッと布を突き出す。
それをネジが首を傾げながら受け取り広げると、昨夜貸した上着。
……若干、昨夜より擦り切れているが。
「昨日は、助かった。…ありがとう」
「……」
照れたように顔を背けるテマリを、ネジがまじまじと見る。
少し擦り切れた上着を見て、黙った。
それをテマリが「…何だよっ」と睨み返せば、ネジがフッと笑う。
「…いや。風邪を引かなかったのなら、いい」
「───」
その柔らかい笑顔に、背中がむず痒い気がして──ぞわっと寒気が。
それが寒気などではないのだと、世間知らずなテマリは分からなかった。
頬が少し熱いのを感じ、誤魔化すようにリーを見る。
「それより、テンテンを探さなきゃならないんだ。見つけやすい場所を知らないか?」
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