仮面夫婦
□六 出会い
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そう答えるテマリに男共は唖然とした。
鉄扇という事は、思いきり殴れば気絶ぐらい出来る立派な武器だ。
殴り所を間違えれば殺せるかもしれない。
ギッと男がテマリを睨み、「…この女っ!」と掴みかかる。
反対にテマリも鉄扇を構えた──急所を殴る気満々だ。
それを察知したテンテンが慌てて間に入る。
そして向かってくる男を力強く蹴った。
「〜〜ああっもう! テマリさん! 何で騒ぎを起こすんですかっ」
「何言ってんだ、テンテン。私はただ、女の子達を助けてやろうと……」
「そんなので殴ったら、打ちどころが悪いと死んじゃいますっ」
そう怒鳴るテンテンに首を傾げ、素で問題発言を返す。
「それの何処が悪いんだ? 悪いのは彼奴らだろ?」
「───」
邪気無く問い返すテマリに、テンテンの表情が強張った。
テマリにはその理由が分からないが、仕方なく扇子を腰に戻す。
屋敷の奥の奥で育ったテマリには、他者を思い遣る気持ちと死への恐怖──それらは未だ未知でしかなかった。
と、男の一人がテンテンを見て蒼冷める。
「げっ……テンテンだ!」
逃げろ、と走り出す男の腕を、素早くテンテンが掴む。
そしてニコリと、恐ろしく笑った。
「……あんた達、いい加減学習しなさいよね」
「ヒィ……!」
テマリの台詞に対するテンテンのやり場のない怒りは、八つ当たり気味の成敗で少し解消された。
けれど
「……あれ、テマリさん……!?」
いつの間にかいないテマリに、今度は彼女が蒼冷めたのだった。
人混みを掻き分け追い掛ける。
時折立ち止まってはきょろきょろと探し、再び走り出した。
テンテンの言いつけを破り彼女から離れて、テマリは先程人混みの中に見た人物を探していた。
太陽の様な髪と、空の様な瞳の少年。
我愛羅の親友にして自分にとっても弟分の──うずまきナルト。
日々旅をしている彼には暫く会っておらず、結婚の報告もしていない。
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