エッセイ

□19歳の夏
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「あやと一緒にいると楽しいよ。」

何度かそう、言ってくれたのに私は、口がうまいな〜という受取りかたしかできなかった。

「俺あやのこと好きかも」


鴨かい!
そうやって気をもたせてさ、私のこと遊んでるんでしょ?


信じることができなかった。

ひねくれた受取りかたしかできなかった。

私が誰よりも自分のことが大嫌いだったから。

こんな人間、好きになれるわけがない!

そう思い込んで疑わなかった。

けれどその思いは同時に、誰に好きだと言われても信じられないというところと=で結びついていた。


あの頃
わたしの中には
「友達」か「彼女」かのどちらかしかなかった。白か黒か。中間のグレイがなくて、友達以上になれるかな なれないかなという時間を楽しむことができなかった。


「私はどうせキープなんでしょ?」

彼はとても驚いていた。そして真剣に怒った。
その時彼は付き合っていた彼女さんと別れたばかりだった。


「そんな風に思われてるなんて思わなかった。俺はまだ誰かと付き合うことが怖いんだ。」


私は、自分の気持ちばかり大切にしていて
彼の気持ちを考えようともしなかった。



確かに世の中には
気を持たせたいがために本心ではない言葉を口にするひともいるのかもしれない。


だけど、
楽しいから楽しい 好きだから好きって
自分の想いを口にしたいから言うひとだっているんだ。


彼は後者の方だった。
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