海賊

□遺り香
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安心する。

安心するんだ。


貴方の香りが傍にあるだけで。





遺り香






「サンジ」

いつかの春の夕暮れ。俺は呼び慣れた名前を呼んだ。
「……」

返事はかえってこない。

「…めしぃ…」

この単語を一言いえば目の前の彼はご飯を作ってくれた。

「……」

なのに今は、作ってくれない。

「……さむみぃ」

そう言えば、後ろから覆いかぶさるように抱きしめてくれた。

「……」

抱きしめてくれた時の温かな彼の身体。今はもう、冷たくて…元々白い肌が更に白くなってる。

「―――っ」

涙がでた。目の前の彼はあまりにも儚げな目をしていたから。頬に涙の跡が何筋もあって、泣いてるように見えたから。

「……何で…サン…ジ」

答えのでない質問を動かない彼に問う。

「――っ!なんか言えよ!!」
俺は目の前で寝ているようにも見える彼を起こすように揺さ振った。

「起きろ!起きろよサンジぃ!!寝てんじゃねぇ!!…………?!」

…ふ、と嗅ぎなれた匂いがした。彼の…サンジの…匂いが…。



急激に目が醒めていく。



………傍に居るじゃん…。俺の傍に…。
サンジは、………居た。
身体は置いただけで魂は此処に…居る。
それを証明するのはこの香り…。無二一つの方法。






安心する。

安心するんだ。


貴方の香りが傍にあるだけで。




だから俺は迷わず貴方の処に逝ける。




「サンジ…。好きだぞ。」






END































『俺も愛してる。ルフィ』
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