海賊

□雨。
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今日は何時も以上に雨がうっとおしかった。



「サンジ?」

「ん?なんだルフィ。」

俺の胸の中に居る恋人、ルフィが俺の顔を見上げて、俺の名前を呼ぶ。俺が恋人の名前を呼ぶ。この時はなんの違和感も無い。そう。何の違和感も・・・。

「何か・・・寂しい・・・。」

俺の胸の中に居るのに、俺が傍に居るのに、何が寂しいと言うのだろう。

「なんで?」

「サンジ。俺が死んでもサンジは死んじゃダメだ。約束・・・してくれる?」

貴方が居ないこの世界に生きてる意味なんて無いのに。生きてく勇気をくれるのは貴方なのに。なぁ・・・後を追うことを赦してくれよ。
「嫌。」

「サンジ!」

「なんでお前が居ないのに生きなくちゃいけねぇ。」

あの時、俺を生かしたのは貴方だ。初めてだったんだ。俺を全部受け止めてくれたのは。

「人はまだまだ沢山居る。だから俺以上にサンジに合う奴が要るかもしんねぇ。」

居る筈ねぇのになんでそんなこと言うんだ?俺は・・・お前じゃないと愛せない・・・。



「んじゃ、俺、バイト行ってくる。」

ルフィは俺の腕から離れ、荷物をとって出ていく筈だった。

「・・・サンジ?!」

俺は・・・ルフィを抱き締めていた。・・・腕から離れる瞬間・・・ルフィが消えそうな気がしたんだ・・・。

「・・・サボれよ。バイト。」

「そういう訳にもいかねぇんだ。」

そっと俺の唇に自らの唇を触れさせ、「いってきます」と小さい声で言った。

「・・あぁ。下まで送るぜ。」

「ありがと」

へへっと少し顔を赤らめて言うルフィが可愛くてもう一度唇を重ねた。今度は深く。舌を絡ませ、お互いの唾液を交換する。

「・・・ふ・・ぅ・・・」

名残惜しげに唇を離し、下まで行くため玄関を出て、エレベーターに乗った。

「今日は何時位になるんだ?」

「う〜ん・・・21時?」

「OK。今日も美味しい飯作って待っといてやるよ。そのかわり、寄り道すんなよ?」
「当たり前だろ!!」

笑いながら言うルフィを見ていたら、さっきの事が嘘のように感じられた。

「そいじゃっ!いってくるぞ!」

「おう!頑張ってこいよ。」

「にっしっしっし♪おぅ!任せとけ!」

ゆっくりと後退し、手を降ってから前を向いた。そして・・・道路。
俺は見えなくなるまでルフィの後ろ姿を見よくつもりが全速力で走り出していた。











・・そんなことあってたまるか!!・・・ルフィの体が・・・車に撥ねられ・・・今まさに・・・とんでるなんて・・・・・・信じねぇぞ!絶対!!














「――っルフィ!!!!」


頼むから無事でいてくれ!誰でもいい!!ルフィを・・・ルフィを・・・・・・。




「ルフィ!ルフィ!!」

既に人混みの中心となっているルフィに近付く為、人との間をこじ開けて前に進んだ。やっと視界が開け、その場に倒れてるルフィを腕の中に抱き込んだ。

「・・・サ・・・ンジ・・・俺・・・ごめ・・ん・・・な・・・。」

「もういい!なんも喋るんじゃねぇ!!」

さっきとは打って変わって力無いルフィ。ほんとに・・・何分か否、何秒か前までは元気だったルフィが・・・。

「・・・サン・・・・・ジや・・く・・・そ・く・・・・」

「あぁ!どんな約束だって守るから死ぬな!死ぬなよ!!ルフィ!!!」













へへっと力無く笑った後・・・ルフィは・・・・・・死んだ・・・・・。












「・・・おい・・・ル・・フィ・・・・・?なぁ・・・さっきみたいに笑えよ・・・。なぁ!!寄り道しないっていったじゃねぇか!忘れたのか?!ルフィ!ルフィ!!ルフィーーー!!」
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