10/15の日記

11:37
忍足誕生日小話
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「雨かー…」

窓際に立ち、独り言なのか側に居る俺に話しかけてるのかわからんくらいのトーンで呟く岳人を見上げた。
ぼうっと外を見つめる瞳はどこか寂しそうで、こんな日に寂しそうな顔をさせたくなくてその腕を引いた。

「何?」
「別にええやん。雨でも。俺は岳人が居ってくれたらそれだけで嬉しいねん」

ほんまに。
天気なんてどうでもええ。
俺の誕生日を祝いたい、と真っ先に予定を確保されて好きな人が自分の誕生日にそばに居たいと思ってくれたんや。
めっちゃ嬉しいで。

「だってさー。本当はいろんなとこ連れてく予定だったのに」

岳人としては今日のプランが全てダメになってしまったことが悔しかったんやろな。
俺を喜ばせようと一生懸命考えてくれたことは知っとる。
本人は隠そうとしとったみたいやけど俺に隠し事なんて無理やって。
きっと岳人は雨が降って出かけられんようになって俺が楽しくないと思っとるんやろけど、それは大きな間違いや。

「家ん中でデートも嬉しいやん。確かに色んなとこ行くのも楽しみにしとったけど、出かけられんようになってちょっとほっとしとる部分もあるんや」
「え?何で?」
「外にあるいろーんな楽しいもんに岳人が目を奪われなくて済むからや」

好奇心旺盛な岳人は楽しいとこ行ったらあんま俺のこと見ぃひんやろ?
キョロキョロ新しいもんを見つけては興味を引かれて。
そうやって笑ってくれる岳人も大好きやけど、今日は俺の誕生日やん。
誕生日くらいお前の興味全部独り占めしてもええんちゃう?

「侑士の言うことってさ、たまに意味がわかんねーんだけど…」
「ほら岳人、こっち座り」

ぽん、とベッドの横を叩くとおとなしく俺の隣に座ってくれた。
軽く沈むベッドの上で岳人の手を握る。

「これからもずっと一緒に居ってな」
「…言われなくてもそうするし」
「いきなりキスしても怒らんとって?」
「いやいきなりはびっくりするじゃん。侑士所構わずするからさぁ」
「じゃあ宣言したらええの?岳人の耳元で『キスさして』って囁いたったら」

小さな耳をくすぐるように唇で触れたら岳人がバッと手で覆ってしもた。

「だ、だからっ…そういう不意打ちをやめろって…」
「やめられへんなぁ。真っ赤になる岳人が可愛えから」
「侑士って、マジで性格悪い」
「岳人も負けてへんよ。可愛えからええけど」
「っ…」

ばしんと思いきり腕を叩かれて、それでも赤い顔で睨んでくる岳人が可愛くて笑ってしまう。
好奇心旺盛で、楽しいことが大好きで、そんな岳人の頭の中には今俺のことしかないんやろな。
嬉しくって口元が緩んでまうわ。

「なぁ、もっと誕生日プレゼント貰てもええかな?」
「え?」

日付が変わったのと同時に岳人から手渡しでプレゼントを貰たけど、今の岳人を見てたらもっともっと欲しくなる。
貪欲でごめんな。
ほんまに自分でもびっくりや。
岳人が欲しくてしゃあないねん。

「ちゃんと口にキスしてもええ?」

不意打ちはあかんのやったらちゃんと言うたるよ。
けど、岳人にあらかじめ言うたところでますます赤くなって固まってまうやん。

「岳人のお望み通り不意打ちはやめたるから。ええよって言うて」
「い、言えって言われても…」

困ってるところも可愛えなぁ。
ちょっと髪に触れただけでびくってなって。
指に絡まることなく流れていく紅い髪がほんまに綺麗。
滑らかな感触に少しの間うっとりしていたら岳人がこくりと頭を振って頷いてみせた。
それがOKのサインっちゅーこと?
どこまでも恥ずかしがり屋さんやね。

俯いたままの岳人の頭に唇を押し付けて。
額や鼻の頭にもキスを落として。
恥ずかしがって目を合わせようとせえへん岳人をそっとベッドの上に押し倒した。


「好きや」


きっと俺は今世界中の誰にも負けへんくらい幸せやで。
自分でもわかるくらい顔がにやけとる。

今日は思う存分イチャイチャさせてもらおうと心に決めて、何度キスを交わしても緊張の色を見せる純粋な岳人の唇に自分のそれを重ね合わせた。






























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忍足さんおめでとう!

10/23のスパークに向けて忍岳を描いてます。
CMのパロディになる予定。

スペースは西3ホールのD66bです。
東ホールからだいぶ離れてしまって行き来が大変そうですが…。
うちの本は忍岳新刊、跡岳既刊、6110アンソロの予定です。
委託として高薙こまこさんの忍岳本、弐号さんの6110本を置かせていただく予定です。
詳細はあらためてお知らせします。

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