空想室
□もしも…タクシー運転手だったら
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少しでも体を暖めようと自動販売機で温かい飲み物を買った。
すれ違うタクシーはどれも[割増]というランプが光っている。
軽く溜め息をつきながら、歩き続けた。
五分ぐらい歩いた所で、ちょうどタクシーが止まり乗客を下ろし始めた。
私は一目散に走り込み、ドアが閉まる頃を見計らって窓を覗いた。
「すいません!○○までお願いしたいんですけど…」
拒否されたらどうしようとドキドキする。
「どうぞ」
運転手さんは快くドアを開けてくれた。
「○○でいいんだよね?」
「はい!お願いします。」
座席に腰を落としてホッとしていると
運転手さんが鼻歌を歌い始めた。
私は窓から外を眺める振りをしながら、何の曲なのか聞き取ろうと耳を傾けた。
「フフフフーン♪…フフーン♪ん?違う!フフフーン…か。」
見た目は若そうなのに、歌っているフレーズは演歌調。
しかも、すれ違う車に文句も言ってるようだ。
私は更に耳を澄ませた。
「ほらあれ危ないなぁ。電話しながら運転すんなっつ〜の」
(ぶふっ)
「ちっ!赤か…」
(ぶふふ)
私はどんな人なんだろうと運転席に視線を移してみた。