観夢室

□楽園
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久しぶりに感じる彼の温もり。
しかし体を重ねながら、彼の中に居る存在が戸惑わせた。
でもどこかで、そんな私達の事を感じて欲しいと思った。
愛しいと思う気持ちを。

隣では、そんな事は知らない彼が難しい顔をして書物を探っている。
「これから、どうなるのかな…」
彼が書物から目を離し、私を見つめる。
「事実を知ってしまったからには無視は出来ない…
僕たちは戦いを始めないといけなくなるかもね…」
「戦いって何の?」
「…生きるため…
この中にヒントが隠されてるかもしれないし…」
「うん。
私も探す…」
私は彼とは反対の棚にある書物をパラパラと捲った。
が、しかしほとんど頭の中には入ってこない。
彼の仕草、彼の息づかいが気になって
それ所では無くなっていた。

もしも、彼が居なくなってしまう事があるならば
いっそこのままでいいと願ってしまう。
彼を失いたくない。
ヴァンパイアと戦うなんて考えたくない…
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