観夢室
□楽園
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意識を戻すと、ソファーに寝そべっていた。
暗がりが広がる部屋は、所々で明かりを燈している。
段々と目が慣れてくると、そこは通い慣れた彼の家だという事が分かった。
自分が何故こんな所に居るのかと不安になりながらも
懐かしさを感じながら、彼を探していた。
「気が付いた様だね…」
彼が、意識を戻したのに気付き私の方へと近づいてきたが
どこか彼に違和感を感じた。
瞳の色が違う…
いつもの彼と変わりないのに、瞳の色が赤かったのだ。
私を見つめる眼は、とても力強くて少し怖い。
「どうしたのかな?…」
彼は笑みを浮かべ、私の反応を楽しんでいるように見えた。
私は、記憶の中の彼の残像を探す。
彼の仕草、彼の話し方…
どれもが当てはまらなくて困惑していると、彼が私の手を取りながら語り始めた。
「この日をずっと待ち望んでいた…この手を握りたかった…
君の泣き顔なんて見たくないんだ…」
彼が急に記憶の中の彼と同じになり、驚きで私は手を振り払う。
彼は少し驚いたが、いきなり笑い始めた。
「あーはっはっは…驚いたかい?これはコイツの言葉さ。」
何?どういう事?
やっぱり彼ではない。
「貴方はいったい…」
私は自然と言葉にしていた。