詩小説

□栄町のイエス
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ウダツのあがらぬ風采
髪は伸び放題
脆弱な体にボロを纏い
時折呟く様に吐く言葉が
高邁で偽善的だから
聞く者の反感を買う
罵声を浴びせても
臆することなく
殴りつけても無抵抗で
泰然としているから
怒りに火を注ぎ
殺意さえ覚える

ある日彼は
中学生3人に
散々からかわれた挙句
公園に追い込まれ
袋叩きにされた
暴力の嵐が吹き荒ぶ中
彼は小さく繰り返し
呟いていた


この子たちは悪くない
この子たちは悪くない
自分のしてる事が
わからないのです



西日が射した公園に
彼らの影が伸びる
去り際に
一人の少年の
蹴った小石が
コロコロ転がる
捨てられた子犬が
不思議そうに首を傾げ
それを眺めていた




彼は運び込まれた病院で
3日後に息をひきとった

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