書庫2
□memory of summer
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それは、一夏の忘れられない物語…
俺の中学二年の夏休みは病室から始まった…
「あー…暑っ…」
外を見れば快晴、空には青空が広がっていた。
きっと、今頃はクラス連中は楽しく遊んでるんだろうなぁ…と、頭に浮かべながらベッドの上から青空を眺める。
自分の家族も、俺を置いて旅行なんかに行きやがった…
「あー……早く直らねぇーかなぁー。」
そう呟き、硬いギプスに覆われている自分の右足を眺め、溜め息を一つ。
コンコン…。
病室のドアから二回のノック。友達は大体、見舞いを済ませ、来ないだろうし、家族は旅行中。こんな時間に回診は無いから…残りは一人……
「彩乃さん?」
「ピンポーン!正解!何で分かったのー?ヒロくん。」
軽快な正解音と供に、白衣の天使とも呼ばれる職業、ナースの彩乃さんが部屋に入ってくる。
彩乃さんは俺の担当で、入院してから凄く仲良くなった。
「秘密。で?どうしたの?」
彩乃さをは「あっ」と何かを思い出し、廊下に戻った後、一人の少女を連れてきた…
「ヒロくん、この子は柏葉 柚子ちゃん。ヒロくんと同じ中学二年よ。仲良くしてあげてね?」
と、紹介された女の子は 長くサラサラな黒い髪をなびかせながら…
「か、柏葉…柚子…です。」
頬を赤く染め、俯いてしまった…
「月城 宙斗です、ヨロシク」
俺は手を差し出した。
「あ……よ、よろしく」
彼女は手を握り返してくれた。
これが…彼女、柏葉柚子との出会いだった……。