書庫1

□ウイルス
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キーンコーンカーンコーン…。

授業の終わりを告げるチャイムが校内に鳴り響き、同時に廊下が騒がしくなる…

「ふわぁ…帰るか…」

6限は軽く眠っていた…
眠たい目を擦りながら立ち上がり教室を後にする

校庭には早くも運動部の連中が練習を始め、それを俺は四階の窓から見下ろしていた。

「……大変だねぇ…運動部は…」

なんて呟いてみるのも、俺は運動部どころか部活には入っていない。所謂、帰宅部って奴だ…。

「義之!」

後ろから声を掛けられ、振り向くとテニスラケットを肩からぶら下げた女の子がぴょこんと立っていた。

「恋。今から部活か?」

「うん。義之は帰るの?」
俺と恋は幼なじみ。
家も近くで、昔から仲がいい。

「おぅ。部活、頑張れよ」
「うん!じゃあね!」

「ん?恋。ちょっと待て。お前…顔赤いぞ?大丈夫か?」

去り際に気付いた…恋の顔色…

「え?そう?大丈夫だよ!私、丈夫だから!」

そう言って恋は走り去っていった…

「あの野郎…」

幼なじみだから分かる事がある…例えば…隠し事や体調なんかは一目瞭然。
間違いなく恋は体調を崩している…。

そう思っては致し方ない。帰るのをヤメ、恋の部活場所であるテニスコートへ足を運んだ。

パコーン、パコーン。

ボールの弾む音がリズムよく聞こえる…。

しばらくするとジャージを着た恋がやってきた…

確かに今日は秋先にしては肌寒い…しかし他の部員はスカートを穿いてる気温、やはり寒いのだろう…恋は…。

「無茶…すんなよな…」

そう呟いた瞬間だった…

フラー……っと恋はコートに倒れた…。

「恋!!?」

思わず上げた俺の大声に他の部員はこっちを振り向く。

急いでコートの入口へ向かい恋の元へ駆け付ける…

「あ…義之……」

恋の身体を抱き上げる…

「ったく…無茶しやがって…バカ野郎…」

他の部員が群がる中、顧問が割って入り一言、「連れて帰ってくれるか?」
言われ無くても連れて帰るってーの……


「ホラ、恋。行くぞ。」

恋をおぶり、他の部員に荷物を頼み、とりあえずは保健室へ向かう。

「大丈夫か…恋…」

「うん…少しクラクラするかな…?あはは…」

「バカ野郎…心配させんじゃねぇよ…」

「ゴメン…」

保健室へ向かわずとも荷物は直ぐに俺の元に届き、そのまま恋の家に帰った…

「……やっぱり…熱あるな…」

「ホントに?」

「バーカ…夜中まで屋根になんか居るから…風邪引くんだぜ?」

「え…何で…」

「何でって…お前ん家、俺の家の向かいじゃん…熱で思考まで働かないのか?」
恋は「あっ…」っと小さく零した…

「ったく…いいから寝てろ。じきに伯母さんでも帰って来るだろ?」

「よ、義之…」

「どうした?」

「ここに居て…」

恋は熱で潤んだ瞳で俺を見つめる…

「分かってる…安心しなよ。」

「うん……」

疲れてたのか…恋は直ぐに寝入ってしまった…

「ったく……」
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