書庫1

□「」
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『さようなら』
この一言で…二人を繋ぐ糸が切れた…。

その日の夜は…ガラにも無く…泣いた…。
いや…。涙が溢れて止まらなかった…。

−−−−−−−。


「雪夜…ゴメン…さよなら…。」

街は数日に迫ったクリスマスに染まって行く中…。
彼女に別れを告げられる…。

「鈴美…何でだよ…。」

鈴美は黙って…俯いている…。
喋る度に…白い息が宙を舞う。

「答えろよ…。訳は…。俺と別れる理由は何だ…。」
「………っ。」

鈴美は走りだした…。

「鈴美!待てよ!」

走っても追い付けない…。
「………っ……。」

俺は立ち尽くした…。
次第に…少しづつ…雨が降ってきた…。

俺は空を見上げる。

「……。俺の…涙を隠してくれてるのかなぁ…。」

一人で呟く…。
うっすらと…涙を浮かべて…。
そのまま…無情にも時間は過ぎていった…。

辺りは…既に暗くなっていた。
時計に目をやると、短針は…十時を指していた。

「帰るか…。」

来る時は二人だった道を一人で帰る…。

帰る間も鈴美の事が…頭から離れない…。
それでも帰り道はわかった…無意識に家の前まで来ていた。

『金木犀』

このアパートに俺は一人暮らしをしている。
二階の端っこが俺の部屋。
ドアの前でカギを出そうとすると…何かに気付いた。
「誰か…いる…?」

部屋の中から声がする。

恐る恐る開けてみると、そこには見慣れた人間が二人。

「…何、勝手に入ってんだ……。」

「おぉ〜遅かったな。」
コイツは士樹。ここの管理人。アパートは親の持ち物らしい。俺とは…入居してからだから…二年くらいの付き合いだ。でも一応…親友…かな?

「遅かったね?勝手に入るのは止めようって言ったんだけど…士樹くんが…。」
この子は光ちゃん。
士樹の…親戚だったかな?この子は俺が来る前から金木犀に住んでるから、やっぱり、二年くらいの付き合いだ、やっぱり…親友…なのかな?

「光ちゃんは気にしなくていいよ。」

「じゃあ、俺も気にしない。」

「てめぇは気にしろ。」

士樹は膨れっ面で少し…いじけた。

「ったく…お前はいつも光には優しいよなぁ…。」

士樹は光の髪をグシャグシャしながら、ふて腐れた。
「女の子だからに決まってんだろ。」

「お前なぁ…そんな事言ってると…鈴美ちゃんに嫌われるぞ。」

「……!」

……。忘れかけていたのに…。

「オイ。雪夜?」

「………。」

「雪夜!」

「え…?…あ…ははは。何て顔してんだろ…俺…。」
「お前…なんかあったろ…。」

鋭い…コイツはいつも変な所で鋭い。

「な、な何言ってんだよ。別に何も無ぇよ。」

「いや…その顔は何かあった顔だね…。」

「………。」

「何か…あったの…?絶対いつかバレる日が来るんだから…。言いなよ。」

「……俺…。」

こいつらに話してもいいのかな…。
そんな感情が頭を過ぎる。笑われかもしれない…慰めてくれるかもしれない…。
この二人には…話そう…。
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