書庫1

□「冬」
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知ってる…?

あなたは知ってる…?

キスって…。


「冬」


私には好きな人がいる。

その人は、私の幼なじみでもあるんだけど…。
いつもはみんなの人気者。もちろん、女子からの競争率も高い。

そんな相手に、何の取り柄もない、普通の女の子の私が好きになってもいいのかなぁ…?

そんな事をいつも考える。
でも、そんな考えを頭から消す言葉がある。それは…

「好きになってしまったものはしょうがない。」

しかし、何度消しても、蘇ってくる。

そんなある日、神様の悪戯なのかな…?
放課後、教室に二人っきりになった。

二人とも、先生を待っている。

とりあえず、帰る準備をしておく。
二人っきりになったのに、何を話していいのか、わかんない…。

ガラッ…。

「おぉ。お前達、待たせて悪かった。今日はもう遅いからプリント出して、帰れ。」

外を見ると、さすがは冬。もう、真っ暗。
雪も降っている。

「お〜い。暗くて危ないから、送っていってやれよ〜。どうせお前達、帰り道同じなんだから。」

「は〜い。」
彼は答えた。
少ない明かりを頼りに、玄関まで無言で行く。

「そういや。お前と二人で帰るなんて、久しぶりだよなぁ。」

下駄箱から靴を取り出した。

「うん。そうだね…」

「最後に帰ったの、いつだっけ?」

「小六の冬だよ。」

「よく覚えてるよなぁ…。」

我ながら、よく覚えてるなぁ…。しかし忘れられない事があったから覚えている。

「だって、あの時、雪積もったからって、暗くなってから、雪玉投げてくるんだもん。」
そぅ…あれは小六の冬。
あの日も二人は帰りが遅かった。
雪も降り始めていて、校庭に出た時、雪玉を投げて来て、真っ暗な校庭で二人は雪合戦をしていた。

「そんな事もあったなぁ…。」

二人は靴を履き終えて、玄関を後にする。

みんなが帰ってからまた、降り出したのか、校庭は一面の銀世界。

その光景を見ていると、後ろから背中に何かが当たった衝撃が走る。

「???」

後ろを振り向くと、雪玉を持って、笑ってる彼がいる。

そして、一個、二個と次々に雪玉を投げ始める。

「やったな…。」

自分も雪玉を作り始めた。しばらく、投げ合った後、なぜか、おいかけっこになっていた。

「ハァ…ハァ…ハァ…」

「あの時と同じだな。」

「そうだね。」
前へ一歩踏み出そうとした時、
「キャッ……。」

雪に足を取られ、バランスを崩し、倒れそうになる。しかし彼が手を引っ張ってくれたにも関わらず、二人とも倒れ込む。

自分が下で彼が私に覆いかぶさっている状態…。

胸の高鳴りが止まらない…。

「あの時と場面が似てるけど……俺達は変わったよな…?
お前は…………か、かわいく…な、なったよ…。」

思いがけない言葉が、彼の口から飛び出す。

「えっ……。あ、ありがとう…。」

二人は照れ臭そうに、目線をそらす…。

「……お前から見て…俺は変わったか…?」

「ううん…。姿は今も昔も変わらないよ………」

彼は溜息をはく。
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