短編小説@

□Rain×Rain
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やっぱり、雨の日は少し苦手だ。

窓を叩く雫をぼんやりと見つめ、クロエはそう思った。










Rain×Rain










朝……クロエを目覚めへと誘ったのは、静かに降り続ける雨だった。

起き上がり、窓に近づく。

どんよりとした黒い雲から白い糸のような雨が降っている。

「雨、か……」

音で分かっていたのに、空気で分かっていたのに、瞳に映った光景にそっと呟いた。



穏やかな雨。



「……い」



一定間隔で響く音。



「……さい」



雨音がやけに耳につく。



「うるさいっ!!」



クロエは耳を塞ぎ、座り込んだ。

「……静かに、してくれ」

懇願するように弱々しく呟いた声は、小さな雨音にかき消された。

イヤな記憶を引き出す音。

そう簡単に消せはしない。

それだけではないはずなのに、耳障りな雨音は不快感のみを引き出した。

「クロエさんっ」

大きな音をたてて、扉が開いた。

「エルザ?体の方はいいのか?」

「はい、大丈夫です。クロエさんの方顔色がよくないですけど……」

「私は大丈夫だ」

そう言って笑ってみせる。

「それより、何かあったんじゃないのか?」

「あっ。そうなんですよ。セネルさんが来ているんです」

「???」

セネルが来た事が、何故、そんなに急ぐ事なのだろう。

それとも、何か急用でもあったのだろうか。

「とにかく来て下さい」

動こうとしないクロエの腕を引っ張る。

「あ、ああ」

クロエの前を歩くエルザがクスクスと笑っている。

「何か楽しい事でもあったのか?」




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