短編小説@
□Rain×Rain
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「あ、いえ……。雨の日にわざわざ訪ねてきて下さるなんて、さすがクロエさんの王子様だなって」
「な、何を言っている////」
「クロエさん、真っ赤ですよ?」
「私をからかうな」
「はいはい」
頬に手をあてると、熱かった。
「あ、クロエ」
ソファに座っていたセネルが立ち上がった。
「では、邪魔者は失礼しますね」
「エルザ!!」
「……?」
二人の様子を不思議そうに見るセネル。
「どうかしたのか?」
二人きりになると、クロエは背を向けてそう尋ねた。
「あ、いや。特別用事があるってワケじゃなくて……。迷惑だったか?」
「そ、そんな事はない」
振り返り、慌てて否定する。
嬉しかったから。
「シャーリィはほっておいていいのか?」
「あいつ今忙しいんだよ」
「そうか。ノーマ達は……」
「クロエ」
何とか話を続けようと言葉を紡ぐクロエを止めた。
そして、にっこりと笑う。
「……」
静かな空間。
嫌な沈黙ではない。
だけど、息苦しい。
「俺、そろそろ帰るな」
「え……」
「実は、ウィルの所へ行く用事があったんだ」
玄関先で傘をさそうとしたセネルは、その行為を止めた。
雨があがっていた。
うっすらと光がさしている。
「止んだみたいだな」
正面からクロエを見てそう言った。
「あぁ、本当だな」
「じゃあ、またな」
歩き始めたセネルが立ち止まった。
「?」
「本当は……雨、見てたら……クロエに会いたくなった」
「え……?」
「泣いてなくて良かった」
「ちょっ、それは……」
走り出したセネルの背中はすぐに見えなくなった。
「ったく、クーリッジ……」
クロエは溜め息を一つつくと、青空が覗き始めた空を見上げた。
雨の日は苦手だ。
だけど、クーリッジが会いに来てくれるのならば、
そう悪くない。
‡END‡
2005/09/26UP
**後書き**
ここまで読んで下さってありがとうございました。
タイトルは「過去の雨」「現在の雨」の意味を込めて。
タイトルつけた時は、インスピだったんですけどね。
何かありましたら、掲示板までお願いします。
槻城花音