short 5

□刺激的コンツェルト
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「さむっ」

ひゅうっと吹きぬけた風にぶるり、体を震わせた。
寒さに対抗しようと首に巻いたマフラーに顔を埋めるように肩が自然と上がる。
隣を歩く銀灰色の彼は私が手をあたためようと息を吐くのにも気付かずに、煙草に意識を向けている。

手くらい繋いでくれてもいいのに、なんて乙女な思いを考えていても彼は気づかない。
きっと、沢田くんのことでも考えているのだろう。
はあ、と溜息を吐いた。

「なんだよ」

「へ」

「人の顔見て溜息ついて」

「なんでもないよ」

「…」

むっとした顔をして、彼―獄寺は煙草を吹かす。
煙草の苦い匂いがふわっと香った。

そういえば、獄寺の家はいつも煙草の匂いがしていたな。
なんだか家にいるみたいでふわふわする。

「家、来るか?」

「へ」

私がさっきと同じような返事をしたからか、獄寺はふっと笑った。
そして、頬をむにっと引っ張られる。

「変な顔」

「変な顔なんてしてない!」

「してた」

「痛いよー」

ぱっと離された頬をすりすり撫でてると、片方の手をぎゅっと握られる。
獄寺を見ると、前を向いて歩きだしていた。
引っ張られる形で私もついていく。

「皮膚に刺激を与えると少しはあたたかくなるんだと」

「そうなの?」

「ああ、家でマッサージでもしてやっから」

「やった!獄寺のマッサージ気持ちいいんだよねー」

素直に褒められて照れたらしい。
獄寺の耳が赤く染まってて、かわいいなあと思った。



刺激的コンツェルト
(んー気持ちいー)(そうか)(寝てしまいそう…)(寝たら襲うぞ)(起きた!)(……)



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